癒し系?

さかのぼること10年前、「癒し系」という言葉が広辞苑に追加されました。ちなみにこのとき、「うざい」「クレーマー」「サービス残業」「さくっと」「ブログ」なども収録されました。言葉は社会とともに移り変わりますが、医療の場で「治癒・快癒・癒着」など病や傷をなおすことに使われてきた「癒」という言葉が、一般に認知され、定着していったことに不思議な思いがしました。

癒しってなんだろう?

幼いころ、転んでぶつけた膝が痛かったとき、優しくさすってくれる母の手にほっこりと心がなごみました。痛くて泣きたい気持ちも転んで恥ずかしい気持ちも、だんだんとやわらいだように思います。
また、頑張って逆上がりができたとき、ぽんぽんと頭をなでてくれた父の手にほんわかした気分になりました。できなくて悔しかったことも手が真っ赤になってつらかったことも、一瞬にしてふっとんでしまったことを覚えています。
みなさんのなかにも、このような思い出があるでしょう。癒しの正体は、実は、このほんわかとした和やかなこころのことです。

癒しのホルモン:セロトニン

人が人のなかで生きていくうえで多少なりともストレスが生じ、脳を活性化させるためにも適度なストレスは必要です。
ストレスが加わると脳はそれをキャッチし、「ノルアドレナリン」という物資を放出します。このノルアドレナリンは脳を覚醒させ、集中力を高めます。皆さんが、ずっと集中して仕事をする、運転をする、人の話を聞くなどの場面では、このノルアドレナリンが分泌されています。一方で、興奮作用をもたらしますので、過度に分泌されると、イライラしたり、強い疲れを感じたりします。
このノルアドレナリンの働きを抑え、沈静化させるのが「セロトニン」です。セロトニンは抗ストレス作用を持ち、感情を安定させます。これによって、自分に自信がついたり、痛みが軽減されたりします。

自分を癒そう

では、この「セロトニン」を増やす方法を少しご紹介しましょう。
マッサージをする、好きな音楽を聴く、おいしいものを食べる、きれいな景色をみる、人とコミュニケーションをとる、人と触れあう、睡眠をとる、歌を歌う、などです。五感(視・聴・嗅・触・味感)をつかい、自分へのご褒美を考えましょう。人それぞれ、こころの感じ方が違いますので、自分に応じた方法を見つけ、そして、それを習慣化し、自分を癒していきましょう。

佐藤郁代