- 近年の労働者を取り巻く環境の変化に伴う不安、悩み、ストレスは、組織や労働者の職務満足やモラールを低下させるのみでなく、精神面に悪影響を引き起こし、うつ病の原因になっていると言われています。また特に若年層においては、育ってきた環境の変化に伴う新型うつも増加していると言われています。
- うつ病はWHOによって,世界で最も頻繁にみられる疾患の第4位に位置づけられ、2020年には全疾病の15%を占め第2位に浮上すると推測されています。
- 一度うつ病に罹患すると職場復帰が厳しいだけでなく、復帰後4年間の再発率が45%にも達し、容易には快復し難い疾患といえます。ある研究によると、産業保健スタッフ48名から報告された職場困難事例131例のうち、精神疾患が原因であるものは最多の51例を占め、その中でもうつ病が最も多く(15例)、このうち最終的には8例が退職,5例が職務や職場の変更・出向という結果をたどっています。
- うつ病による企業の経済的損失額は、30代後半で年収約600万円の男性労働者が休職した場合、中規模企業では422万円になると言われています(内閣府男女共同参画局,2008)。
- 2012年に厚生労働省が実施している「労働者健康状況調査」において「自分の仕事や職業生活に関して、強い不安、悩み、ストレスがある」とする労働者は60.9%と半数を超えています。
- このように労働者のメンタルヘルスを囲む現状が混沌としているなか、メンタルヘルスへの罹患は本人への負担が大きく、家族、企業も含め考えると、その精神的、経済的負担は計り知れないものがあります。
- メンタルヘルス不調者に対して従来から行われている対処の多くは、休職、配置転換といったストレス源から回避する方略です。しかしながら休職にも期間的な限界があり、配置転換にも労働者個々の能力や技術の問題、組織全体としての生産効率の問題があります。また中小企業の場合は配置転換する部署がないということもあり、こういった従来の対処方略には大きな制約があります。
- 「労働安全衛生法」という法律が改正され、労働者が50 人以上いる事業所では、原則として全ての労働者に対し、毎年1回ストレスチェックを実施することが義務付けられました。
- しかしながら中小企業の方が休職等の影響を大きく受けるため、ストレスチェックが義務化されていないとは言え、ストレス対策は急務と言えます。
これらのことから、うつ病の予防を目的としたストレス対策を行うことが、労働者本人、企業経営者双方にメリットをもたらすことになると確信します。